肝臓内科の主な病気

脂肪肝

脂肪肝のイメージ写真

脂肪肝の原因として最もよく知られているのはアルコールです。
脂肪肝というととにかくアルコールを減らせばいいように思われがちですが、その一方で、お酒はほとんど飲まないのに脂肪肝を指摘される人も近年は増えてきており、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と言われています。
そしてこの非アルコール性脂肪肝の中には、まるでアルコールを飲んでいる時と同じように肝炎、肝硬変、肝がんに進行していくタイプも少なからず含まれる事が分かっており、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と呼ばれています。
アルコールが原因でない脂肪肝の人の中で実に10~20%がこのNASHになり、更にNASHの一部は肝硬変まで進むと言われています。
これまでに原因不明とされてきた肝硬変の中には、実際はNASHが関与しているものがかなり含まれていると考えられています。

アルコール性肝障害

アルコールの日常的な過剰摂取では、最初にアルコール性脂肪肝を発症し、それを放置していると約2割がアルコール性肝障害に進行してしまいます。
自覚症状がほぼ無いため、習慣的な飲酒を繰り返しているとアルコール性肝線維症からアルコール性肝硬変へ進行する可能性があります。
重症化すると肝不全症状(腹水、黄疸、肝性脳症など)をきたし、消化管出血、時には食道静脈瘤破裂によりショック症状を起こして死亡することもあります。
アルコール性肝障害は男性に多いイメージがあると思いますが、同じ飲酒量を続けた場合は女性の方にアルコール性肝障害が起こりやすいとされています。

B型慢性肝炎

B型肝炎ウイルス(HBV)が血液、および性交渉などによって感染し、持続感染した状態がB型慢性肝炎です。
日本人の持続感染は、ほとんどの場合が生後早期に感染する母子感染と言われています。
HBVキャリアーの10〜15%は肝機能異常が生涯持続し、慢性肝炎から肝硬変に進行します。
一方、HBVキャリアーのおおよそ85〜90%は「セロコンバージョン」と呼ばれる現象を経て肝機能が正常となり、無症候性キャリアーとなります。
肝硬変への進展と発癌リスクに影響を与える最も重要な因子はHBV DNAの量です。
HBV DNA 量が多いほど肝硬変発症と発がんのリスクが高くなります。
従って、B型慢性肝炎ではHBV DNAの量を下げることが最も重要であり、治療にはインターフェロンや核酸アナログ製剤が用いられています。

C型慢性肝炎

C型肝炎ウイルス(HCV)が主に血液を介して感染します。
輸血や血液製剤、使いまわした針などが感染源となることが多く、急性肝炎を発症した場合には約7割は肝炎が慢性化し、C型慢性肝炎となります。
C型慢性肝炎の進行は一般的にゆっくりですが、自然治癒することはまれです。
自覚症状もほとんどありませんが、10~30年という長い期間をかけて肝硬変へと進行し、その後高い確率で肝細胞がんを合併します。
C型肝炎の治療は、以前はインターフェロンが主流でしたが、近年C型肝炎ウイルスを駆除する直接作用型抗ウイルス剤(DAA)と呼ばれる経口薬が開発され、副作用も少なく、年齢性別を問わずC型肝炎は、ほぼ100%治る時代になりました。

自己免疫性肝炎および原発性胆汁性胆管炎(PBC)

自己免疫性肝炎は免疫の異常が関係していると考えられている難病で、中年以降の女性に好発することが特徴です。
原因がはっきりしている肝炎ウイルス、アルコール、薬物による肝障害、および他の自己免疫疾患による肝障害を除外して診断します。
また治療では副腎皮質ステロイド が効果的です。
症状が軽いケースが多いのですが、肝硬変に進行する可能性があるため、ステロイドなどによって進行を止めることが重要です。
また原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、胆汁の流れの小葉間胆管から隔壁胆管の部分に破壊が起きて胆汁のうっ滞を起こす病気です。
胆汁うっ滞に伴い肝実質細胞の破壊と線維化を生じ、最終的には肝硬変になることから以前は原発性胆汁性肝硬変と呼ばれていました。
この病気の原因も自己免疫反応が関与する「自己免疫疾患」であることが、国内外の研究で明らかになりつつあります。
PBCそのものに対する治療としては、ウルソ(ウルソデオキシコ-ル酸)という薬に胆汁の流れを促進し病気の進行を抑える働きがあることが分かっており第一選択薬となっております。